この記事では、企業が従業員のメンタルヘルス対策に取り組むことの重要性について、お伝えします。
メンタルヘルス対策が重要な理由
従業員のメンタル不調による生産性の低下
近年、経済・産業構造が変化する中で、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合が高くなっています。
厚生労働省の労働安全衛生調査によると、仕事や職業生活に関して強いストレスを感じている労働者の割合は令和5年度で82.7%となっています。
また、同調査によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%となっています。
仕事による強いストレス状態が継続すると、心身の状態が悪化し、うつ病や心身症など、従業員のメンタル不調につながる可能性があります。
そして、従業員のメンタル不調は、仕事のパフォーマンス低下や、休職、退職などにつながりうるため、会社にとって生産性が低下する原因としても重要です。
例えば、従業員1人がメンタル不調等を原因に6カ月間休職した後に復職する場合、休職期間の6ヵ月と休職前後の各3か月に同僚が業務を代替したり補完したりする費用や、管理職・人事部担当者による業務の調整や事務処理等が発生し、休職者へ支払う給与が減少する分を差し引いても、年間422万円のコストが発生するという試算があります。
内閣府男女共同参画参画局「企業が仕事と生活の調査に取り組むことのメリット」(平成20年)
厚生労働省によると、メンタルヘルス不調者の復職後5年以内の再病休率は47.1%で、特に復職後2年間は再発のリスクが高いとされています。
厚生労働省「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究 平成28年度報告書」
このようなメンタル不調の特性を考えると、企業にとっては、事業の継続的・安定的な運営という意味からも、メンタルヘルス対策は極めて重要だと言えます。
人口減少による人手不足が深刻な中、企業が生産性を上げ成長していくために、メンタルヘルス対策は最も重要な経営課題の一つといっても過言ではありません。
精神疾患を理由とする労災申請・損害賠償請求リスク
労働災害といえば、かつては事故によるケガや有害物質への暴露などによる疾病が中心で、うつ病などの精神疾患に関する労災申請の件数はあまり多くありませんでした。
しかし、近年、業務による心理的負荷を原因として精神疾患を発症し、あるいは自殺したとして労災認定が行われる事案が増加しています。
このことから、企業にとってメンタルヘルス対策が重要な理由の一つとして、メンタル不調となった従業員・元従業員などによる労災申請のリスクがあげられます。
例えば、うつ病などのメンタル不調により休職した従業員は、療養してもなかなか体調が改善せず、元の仕事に復帰するのが難しい場合があります。
このとき、会社としては新たな人員確保の必要もあり、「仕事に復帰できないのであれば解雇せざるを得ない」と判断しがちです。
そこで、会社が従業員に解雇を示唆したりすると、「自分がメンタル不調になった原因は職場環境や仕事上の人間関係などにあるのだから労災を申請する」と主張することが増えています。
さらに、労災認定されると、多くの場合、会社が安全配慮義務を怠っていたとして損害賠償請求が行われる可能性があります。
こうした事態になると、企業は労働基準監督署への対応などに追われ、業務運営に支障をきたします。
さらに、従業員・顧客・取引先などの信頼を失ったり、損害賠償請求による財務的影響も発生します。
したがって、リスクマネジメントの観点からも、従業員のメンタル不調の予防や、メンタル不調になった従業員の復職に向けた支援、それらの基盤となる職場環境の整備などが重要となっています。
メンタルヘルス対策は「働きやすい職場環境づくり」そのものである
メンタル不調につながりうる職場環境要因(ストレス要因)として、代表的なものに過重労働やハラスメントがあげられますが、他にも様々な要因が考えられます。
例えば、過去に経験したことのない業務への配置転換や転勤や、これまで複数名で担当していた業務を一人で行うことになった、自分の経験・能力と乖離した重い責任が課せられた、といった仕事上の役割・地位の変化は、仕事上のストレス要因となります。
他にも、仕事上の重大なミスをして事後対応に追われた場合や、顧客などから対応困難な注文や要求を受けた場合、事故や災害の発生、人間関係など、メンタル不調の要因には職場における様々な問題が関係しています。
こうしたことから、メンタルヘルス対策とは、全ての従業員が働きやすい職場環境を実現していくことであると言えます。
そのためには、働きやすい職場環境の実現を経営方針として定めて社内外に周知させることや、職場の問題を把握して改善につなげる仕組みをつくること、従業員が職場の問題を安心して相談できる窓口を設けることが重要です。
まとめ
メンタルヘルス対策が企業経営にとって重要な理由として、以下の内容を説明しました。
- 従業員のメンタル不調による生産性の低下
- 精神疾患を理由とする労災申請・損害賠償請求リスク
- メンタルヘルス対策は「働きやすい職場環境づくり」そのものである
